事業主の使用者責任を肩代りしてくれる
労働基準法では、業務中に生じたケガなどについては事業主に責任があるとして、事業主にその損害を補償するよう求めています。つまり、職場の安全衛生や衛生管理など、使用者としての責任をとても重く見ているのです。
しかし、従業員がケガをするたびに会社が全て面倒を見ていたのでは、それだけで会社が傾いてしまいます。従業員の中にも、わざとケガしてやろう、などという悪い人が混じっているかもしれません。
そこで設けられた制度が、労災保険です。政府が運営しているので、政府労災と呼ばれることもあります。このほか、民間の保険会社が提供する損害保険や、任意労災などいわれる保険商品もあります。
政府労災がカバーする範囲は、業務中の災害と、通勤途中の災害です。災害にはケガだけでなく、病気も含まれます。業務中のケガですので、ケガの原因が業務中になければいけません。例えば機械で指を切ったとか、化学薬品が目に入った、といったケースなら業務中の災害とみなされます。しかし、もともと腰や心臓が悪い人が、業務中その症状が悪化した、という場合もあるでしょう。この場合はケースバイケースですが、労働基準監督署の判断によっては、業務災害と認められない場合もあります。
通勤災害の場合は、家と職場の間を、合理的な経路と方法で移動している最中に発生したものに限られます。つまり、通勤途中に寄り道して、その後バイクと接触したといったケースでは、通勤災害と認められず、労災保険の対象になりません。